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逆ガンマ分布の導出 ~標準ベイズ統計学 第5章を題材として~

はじめに

ベイズ統計学の基礎をあらためて学ぶために,ピーター・D・ホフ 著,入江 薫・菅澤 翔之助・橋本 真太郎 訳 「標準 ベイズ統計学」を読むことにした。


本記事では,第5章に登場した,逆ガンマ分布についてまとめた。

本記事のハイライト

  • 逆ガンマ分布は,変数 Yがガンマ分布にしたがうとき,変数 X = 1/Yがしたがう分布である。
  • 確率密度関数の導出を説明し,その後平均・分散の導出手順を示した。

第5章 正規モデル

正規モデルと逆ガンマ分布

変数が1次元正規分布 p(y \mid \theta, \sigma^2)にしたがう正規モデルについて,パラメータ \theta, \sigma^2はそれぞれ,


 \begin{align}
\theta &\sim \text{normal}(\mu_0, \tau_0^2) \\ \\
1/\sigma^2 &\sim \text{gamma} \left(\frac{\nu_0}{2}, \frac{\nu_0}{2} \sigma_0^2 \right) \\ \\
\end{align}
のように設定した。このように 1/\sigma^2がガンマ分布にしたがうとき,その逆数 \sigma^2は逆ガンマ分布にしたがう。


本記事では,逆ガンマ分布の確率密度関数の導出について説明した。

ガンマ分布の復習

ガンマ分布 \text{gamma}(a, b)(ただし, a \gt 0, b \gt 0)の確率密度関数は,以下のように表される。


 \begin{align}
p(x \mid a, b) = \frac{b^a}{\Gamma(a)} x^{a-1} e^{-bx} \quad (x \gt 0) \\ \\
\end{align}


ガンマ分布の平均と分散はそれぞれ,


 \begin{align}
E [ X ] = a/b, \quad V[X] = a/b^2 \\ \\
\end{align}
になる。


なおガンマ分布の別の表記として,


 \begin{align}
p(x \mid a, \nu) = \frac{1}{\Gamma(a) \nu^a} x^{a-1} e^{-x/\nu} \quad (x \gt 0) \\ \\
\end{align}
という表記も存在する。

逆ガンマ分布

定義

変数 Yがガンマ分布にしたがうとする。すなわち Y \sim \text{gamma}(a, b)であり,確率密度関数で表すと,


 \begin{align}
p(y \mid a, b) = \frac{b^a}{\Gamma(a)} y^{a-1} e^{-by} \quad (y \gt 0) \\ \\
\end{align}
である。


変数変換 X = g(X) = 1/Yを行なったとき, Xがしたがう確率分布が逆ガンマ分布である。

導出

定義域の確認

変数変換を行なう際には,定義域の確認が重要である。 Y \gt 0であるため, X \gt 0である。またこの変換は1対1変換であるため,ヤコビアンによる変数変換を行なうことができる。


 Yおよび Xの確率密度関数をそれぞれ f_Y(y), f_X(x)と表すと,変数変換 X = g(X) = 1/Yによって f_Y(y)を変数変換した確率密度関数 f_X(x)は,


 \begin{align}
f_X(x) = f_Y(g^{-1}(x)) \left\lvert \frac{dy}{dx} \right\rvert \\ \\
\end{align}
となる。

 Y = g^{-1}(X) = 1/Xであるため, \lvert dy/dx \rvert = 1/x^2である。よって f_X(x)は,


 \begin{align}
f_X(x) 
&= \frac{b^a}{\Gamma(a)} (x^{-1})^{a-1} e^{-b/x} \cdot \frac{1}{x^2} \\ \\
&= \frac{b^a}{\Gamma(a)} x^{-a-1} e^{-b/x} \quad (x \gt 0) \\ \\
\end{align}
となる。

これを逆ガンマ分布 \text{inverse-gamma}(a, b)と表す。

逆ガンマ分布の平均

逆ガンマ分布は,積分すると1になるため,


 \begin{align}
&\int_{0}^{\infty} \frac{b^a}{\Gamma(a)} x^{-a-1} e^{-b/x} dx = 1\\ \\
\therefore & \int_{0}^{\infty}  x^{-a-1} e^{-b/x} dx = \frac{\Gamma(a)}{b^a} \\ \\
\end{align}
となる。


逆ガンマ分布の平均は


 \begin{align}
E[ X ] 
&=  \frac{b^a}{\Gamma(a)} \int_{0}^{\infty} x \cdot x^{-a-1} e^{-b/x} dx\\ \\
&= \frac{b^a}{\Gamma(a)} \int_{0}^{\infty} x^{-(a-1)-1} e^{-b/x} dx\\ \\
\end{align}
となる。

この積分が存在する条件は a-1 \gt 0すなわち a \gt 1である。このとき,逆ガンマ分布 \text{inverse-gamma}(a-1,b )の積分を考えると,


 \begin{align}
E[ X ] 
&=  \frac{b^a}{\Gamma(a)} \cdot \frac{\Gamma(a-1)}{b^{a-1}} \\ \\
&= \frac{b^a}{(a-1)\Gamma(a-1)} \cdot \frac{\Gamma(a-1)}{b^{a-1}} = \frac{b}{a-1} \\ \\
\end{align}
となる。ただし,ガンマ分布の性質 \Gamma(a) = (a-1)\Gamma(a-1)を用いた。

逆ガンマ分布の分散

平均のときと同様に考えると,


 \begin{align}
E[ X^2 ] 
&=  \frac{b^a}{\Gamma(a)} \cdot \frac{\Gamma(a-2)}{b^{a-2}} \\ \\
&= \frac{b^a}{(a-1)(a-2)\Gamma(a-2)} \cdot \frac{\Gamma(a-2)}{b^{a-2}} = \frac{b^2}{(a-1)(a-2)} \\ \\
\end{align}
となる(ただし,この積分が存在するのは a \gt 2のとき)。


よって分散は,


 \begin{align}
V[ X ] 
&=  E[ X^2 ] - (E[ X ] )^2 \\ \\
&= \frac{b^2}{(a-1)(a-2)} - \frac{b^2}{(a-1)^2} = \frac{b^2}{(a-1)^2(a-2)} \\ \\
\end{align}
となる。

ガンマ分布の分布形状

パラメータ (a, b)を変えながら,逆ガンマ分布 \text{inverse-gamma}(a,b)のグラフを描画した。

逆ガンマ分布の確率密度関数

描画用コード:


この図から,

  •  aを大きくすると,分布は全体的に右から左により,分散も小さくなる。
  •  bを大きくすると,分布は全体的に右に寄る。

という傾向が確認できた。

まとめと感想

本記事では,第5章に登場した,逆ガンマ分布についてまとめた。


逆ガンマ分布は,変数 Yがガンマ分布にしたがうとき,変数 X = 1/Yがしたがう分布であった。

確率密度関数の導出については,定義域を確認したうえで,ヤコビアンによる導出が可能であった。
また平均・分散については,パラメータの値の範囲に注意する必要があること,積分を行なう際には「確率密度関数の積分は1」という事実を用いると計算が楽になること,などを確認した。

逆ガンマ分布の確率密度関数や平均・分散の導出は,統計検定1級レベルの問題であるため,計算問題として解いておいて損は無いと感じた。


本記事を最後まで読んでくださり,どうもありがとうございました。