はじめに
私は統計検定1級を受験する際に,数理統計学の学習にあたって竹村彰通「現代数理統計学」や久保川達也「現代数理統計学の基礎」といった解説の丁寧な参考書を読み進めていた。しかしそれらはときどき難易度が高いことがあり,理解に時間を要する箇所が少なくなかった。そのため,異なる切り口や表現によって理解を補強できる補助教材の必要性を感じていた。
東京大学教養学部統計学教室編「自然科学の統計学」は,1992年発行のやや古典的な文献であるが,自然科学に関わる統計学的テーマが簡潔にまとめられており,理解の補完に有用であった。
その後,数理統計学や機械学習の応用に関する様々な書籍を読んだが,その根底には数理統計学があると感じた。そのため基本に立ち返り,数理統計学の復習も兼ねて,本書を読むこととした。
ただ,基本的なことは他書で学んできたのと,本書自体がかなり細かく説明されているので,本書内の内容や数式を細かく追うというより,実務や統計検定の受験において有用そうなことを選んでまとめてみたい。
- 本書の紹介ページ
本書の見どころ
自然科学に関する数理統計学の話題がコンパクトにまとまっている。
本書の見どころについては,過去のブログにてまとめていた。
このときは,
- 全般 : 幅広い話題がコンパクトにまとまっている
- 第3章 : 分散分析・実験計画法が説明されている
- 第4章 : フィッシャー情報量や最尤推定の漸近分布の雰囲気がつかめる
- 第6章 : 統計的検定の考え方がまとまっている
- おまけ : コラムがおもしろい
といった点が良い,という説明をしている。
今回改めて読み直してみたが,上記以外にも,線形モデルや質的データの分析などは,日常業務でも利用するシーンが多い手法であるが,多様な話題がコンパクトにまとまっていることを再認識した。
ただしコンパクトにまとまっているがゆえに,初読の際には説明が難しい部分もあった。たとえば確率過程などは読み進めるのが大変だった。そのため本書は,他書を読んだときに分かりにくかった話題を再確認したり,他書を読む前に概要をつかむのには向いていると感じた。
