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データサイエンスの核心を掴む : 学びと発見の記録

IPA&DSA第2回データ未来会議に行ってきた

はじめに

先進的な企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)や政府のデジタル・データ戦略に関する情報収集のために, IPA&DSA第2回データ未来会議に行ってきた。
本会議の資料は後日共有されると考えられるが,当日発表を行なった民間企業(JR東日本・ライオン)の取組みで特に興味深かった点について,公開情報をもとに紹介したい。

https://www.ipa.go.jp/event/2024/sbn8o10000007ypm-img/sbn8o10000007yr7.png

会議の概要

第2回データ未来会議は,情報処理推進機構(IPA)とデータ社会推進協議会(DSA)が共催するイベントである。
経産省・デジタル庁といった政府関係者のパネルディスカッション,RRI・日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)といった業界団体関係者のパネルディスカッション,および民間企業の事例紹介といった内容で,国内外のデータ施策の最新状況や実際のデータ活用の取組みなどが紹介されている。

  • IPAによる本会議の紹介サイト

www.ipa.go.jp

  • DSAによる本会議の紹介サイト

data-society-alliance.org

JR東日本の取組み

JR東日本は,「鉄道やバスの遅れを加味した「リアルタイム経路検索」とSuicaデータ活用の新たな試み「タッチトリガー」」という題目で,マーケティング本部戦略・プラットフォーム部門デジタルビジネスユニット 村上洋輔氏が講演を行なっていた。この講演において興味深かった点について,公開情報をもとに紹介する。

リアルタイム経路検索

「リアルタイム経路検索」は,経路検索システムにおいて,電車の遅延状況を反映して経路検索を行なう仕組みである。電車の遅延が発生すると,電車が駅に到着する時刻が遅くなるが,この影響で乗り継ぎができる電車が変わる(乗り継げなくなることが発生する)。電車の遅延の影響をリアルタイムに反映して経路検索を行なう仕組みが,リアルタイム経路検索である。

リアルタイム経路検索の凄さはデータ共有

私自身もリアルタイム経路検索の恩恵にあずかっているが,参考サイトにある通りリアルタイム経路検索では,私鉄との乗り継ぎも含めた経路検索が表示されるのであるが,これを実現するためには他社である私鉄とデータ共有ができている必要がある。

私が働く製造業では,データを社外に提供することにはかなり慎重になっている。しかしJR東日本では,他社ともデータを共有するための契約スキームや,データ共有システムを構築しているということになる。ユーザからすると,JRだけの乗り換えだけではなく私鉄の乗り換えも含めた情報が欲しいので,データを他社と共有するという判断は,ユーザにとって有益な選択である。

JR東日本にも当然社外秘のデータが存在するはずなのであるが,ユーザの利益を実現するために,オープンにするべきデータ・クローズにするデータを弁別し,オープンにするべき自社データを他社と共有すると同時に,他社にもデータを共有させる仕組みを構築しているというのは,かなり衝撃的だった。

センターサーバー方式の新しいSuica改札

これまでSuicaの仕組みでは,各駅に置かれている改札機が運賃計算を行ない,ユーザのSuicaに対して読込み・書込みを行なっていた。
これに対して今後導入されるセンターサーバー方式では,改札機とセンターサーバーが通信を行ない,運賃計算はセンターサーバーが行なう仕組みになっている。

センターサーバー方式の凄さはサービス拡大の可能性を広げること

センターサーバー方式のメリットは参考サイトにもある通り,他のシステムと連携することで新たなサービスと生み出せることである。
JR東日本では,旅客・貨物を輸送するサービスだけでなく,駅におけるサービスも展開している。センターサーバー方式にすることにより,旅客の情報を集約できるようになるため,鉄道沿線(商業施設など)と連携したクーポンを発行しやすくなるのである。

タッチトリガー

タッチトリガーとは,Suicaのタッチのタイミングをリアルタイムに活用できるサービスである。

  • 参考サイト

www.jreast.co.jp

タッチトリガーの凄さはユーザの行動に応じたサービスができること

タッチトリガーによって,入場のタッチタイミングと,出場のタッチタイミングが分かるので,電車の中にいる・通勤先に移動している・自宅に移動しているといったユーザの状態を推定できるという点である。このようにユーザの状態を推定できると,これに応じたクーポンを発行するといった,ユーザ体験を向上させることが可能になる。

ライオン

ライオンは,「ハイブリッド人材で加速するライオンのデジタル変革」という題目で,執行役員 全社デジタル戦略担当・デジタル戦略部担当 中林紀彦氏が講演を行なっていた。

ライオンにおけるDX事例について詳細に説明されていたが,特に興味深かったのは,DXに関する社外向けサイトを作っている点であった。
www.lion.co.jp


ライオンというと,歯磨き粉などの「ものづくりの会社」という印象が強かったが,「『習慣を科学する』ことで、人々のより良い習慣づくりに貢献する新しい製品・サービスを創出していきます。」というユーザ視点に立ったメッセージを発信していた。

またビジョンや各種施策を社外に打ち出していることも印象的であった。おそらくDXに関する取り組みを前面に打ち出すことが,株主や消費者に対するアピールになるという判断なのだろう。

まとめ

IPA&DSA第2回データ未来会議」に登壇した,JR東日本・ライオンの取組みについて紹介した。

いずれの企業も日本を代表する企業であり伝統的な企業であるが,明確なビジョンのもと,徹底的にユーザのメリットを追求した施策やシステム・サービスづくりを行なっていた。またこの実現に向けてデジタルをしっかり活用していた。特にJR東日本については,講演の中ではあまり触れられていなかったが,センターサーバー方式を実現するためのシステム構築にも相当力を入れているはずである。

ビジョンを掲げることやユーザ目線に立ったサービスづくりなどは着手できそうであるが,この2社のように徹底して取組んでいきたい。
また,定期的に他社の取組みについて情報を集めて,自社の施策に反映できるものは反映していきたい。


本記事を最後まで読んでくださり,どうもありがとうございました。