はじめに
統計検定1級の統計数理・理工学において,ベータ分布はこれまでに2回しか出たことがないテーマではあるが,数理統計学のテキストにはよく出てくる分布である。
先日,ガンマ分布の正規近似とスターリングの公式 #統計検定 - jiku logという記事を紹介した。ガンマ分布を正規分布で近似する際に,スターリングの公式を導出するというものである。
似たような流れで,ベータ分布を正規分布で近似する手順を紹介する。
ベータ分布の正規近似
方針
確率分布を近似する際には,
- 変数変換を用いる
- 累積分布関数を用いる
- モーメント母関数を用いる
といった様々なアプローチ方法があるが,今回は「1. 変数変換を用いる」というアプローチを採用する。
なぜなら,ベータ分布の累積分布関数やモーメント母関数は,結構複雑な形をしているためである(参考:ベータ分布 - Wikipedia)。
またベータ分布にはパラメータが2つ存在するが,今回は
として近似する。
変数変換アプローチの全体像
変数変換アプローチの全体像を以下の図に示した。

導出
Step 1. 標準化の応用による確率変数の変数変換
今回は,ベータ分布にしたがう確率変数について,
のように標準化すると,の極限において,確率変数は
は標準正規分布に近似できることを示すことが目的である。
確率変数がベータ分布
にしたがうと,
となるので,確率変数がベータ分布
にしたがうと,
となる。よって,確率変数と
の関係式は,
となる。
なお,のように変形すると,
の分母が
になるので,式がかなりシンプルになるのだが,この記事ではこのような変形は行なわずに話を進める。
変数の範囲を確認する。であるので,
となる。
よって,の極限では,
となる。
また変数変換のヤコビアンは,