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データサイエンスの核心を掴む : 学びと発見の記録

「Pythonで学ぶ衛星データ解析基礎」を読む ~第4章 衛星データ解析手法別演習[解析編] ①バンド演算~

はじめに

宮﨑浩之 監修「Pythonで学ぶ衛星データ解析基礎―環境変化を定量的に把握しよう」は,Pythonを用いた衛星データ解析の基礎から実践までを網羅的に解説しており,製造業の競争力強化と持続可能な社会の実現にとって重要な,環境モニタリングやインフラ管理への応用に資する知識を提供すると考えている。本書を読むことを通じて,衛星データ解析を基礎を学ぶ。

本記事は,「第4章 衛星データ解析手法別演習[解析編]」における,バンド演算に関する読書メモである。

第4章 衛星データ解析手法別演習[解析編]

衛星のセンサは,さまざまな波長で観測を行なう。また観測対象である地上の物体には,いろいろな反射特性がある。そのため,衛星の観測波長帯(バンド)を上手く組み合わせることで,特定の物質(植物など)が見つけやすくなる。
本章では,バンドを組合わせた演算の基本からその応用まで紹介している。

4-1 バンド演算について

波長の基礎知識

人間が物体を認識するには,電磁波のうち可視光を用いている。さらにこの可視光は,青,緑,赤の3色で構成されている。
衛星が観測する電磁波には,可視光以外にも赤外線など,他の波長の電波もある。
物質によって,電磁波の反射や放射の特性が異なるので,対象とする物質に応じた電磁波のバンドを用いることで,特定の物体,例えば植生の生育状態を観測することができる。

バンド演算

衛星が持つバンド(波長)を組合せを変えることにより,見えるものが異なる。

波長の組合せと見えるもの

正規化指標

2種類のバンドをバンドA・バンドBとする。それぞれの反射率について,


 \begin{align}
\frac{\text{Aの反射率} - \text{Bの反射率} } {\text{Aの反射率} + \text{Bの反射率} } \\ \\
\end{align}
を計算すると,この指標は最小で-1,最大で1となるように正規化されている。このように正規化された指標を正規化指標と呼ぶ。

NDVI

正規化指標のうち代表的なものはNDVIであり,これは近赤外(NIR)と赤(Red)を用いて,以下のように計算される。


 \begin{align}
\text{NDVI} = \frac{\text{NIR} - \text{Red} } {\text{NIR} + \text{Red} } \\ \\
\end{align}

植物に含まれるクロロフィル(葉緑素)は,赤色帯域を吸収し,近赤外帯域を反射するという特性を持つため*1,NDVIが大きいと植物の状態が優れていることを表す。

NDVIの可視化

Sentilen-2のデータを用いてTrue Color(左)とNDVI(右)を可視化した結果が下図のようになる。

NDVIを用いることで,植生を示す緑色の部分がより強調されていることが確認できる。

今回は,以下のサンプルコードを参照した。
github.com

NDWI・MNDWI

その他の正規化指標として,NDWI(Normalized Difference Water Index)は,地表の水系を解析するために用いられる。

NDWIは,赤(Red)と短赤外(SWIR)を用いて,以下のように計算される。


 \begin{align}
\text{NDWI} = \frac{\text{Red} - \text{SWIR} } {\text{Red} + \text{SWIR} } \\ \\
\end{align}

また近年では,NDWIを修正したMNDWI(Modified Normal Difference Water Index)も用いられる。MNDWIは,地表からのノイズ(植生や砂地など)を低減し,水域を強調する。

MNDWIは,緑(Green)と短赤外(SWIR)を用いて,以下のように計算される。


 \begin{align}
\text{MNDWI} = \frac{\text{Green} - \text{SWIR} } {\text{Green} + \text{SWIR} } \\ \\
\end{align}

まとめと感想

今回は,「第4章 衛星データ解析手法別演習[解析編]」における,バンド演算についてまとめた。

バンド演算では,単一のバンドに着目するのではなく,2つのバンドに着目することで,観測対象の物体を特定し,かつ値の範囲も-1から1の範囲に収まるように正規化指標を計算しているという点が興味深かった。今回はNDVI,NDWI,MNDWIを学んだが,その他の指標についても今後使えるようになりたい。

本記事を最後まで読んでくださり,どうもありがとうございました。

*1:植物は緑色に見えるが,これは青・緑・赤が混じった太陽光のうち,赤を吸収するため,残りの色が反射するためであると言える。