「理系のための交渉学入門」の紹介
本書は,一色正彦氏・田上正範氏・佐藤裕一氏が書いた,交渉の準備や進め方に関する方法論を説明している書籍である。
本書の章立ては,以下の通りである。
- 序 章 理系が交渉を学ぶ意義
- 第1章 交渉の理論
- 第2章 論理的思考に基づく,意思決定
- 第3章 行動科学に基づく,コミュニケーション
- 終 章 交渉の成功確率を上げるために
- 演習問題:ストーリーで学ぶ逆引き理論解説
本書を読もうとした理由
私自身が交渉学について学ぶ機会があり,より深く交渉学について学ぼうとしたためだった。
私はどちらかというと人付き合いの苦手な性格で,交渉というとかなり相手に対して手八丁・口八丁で臨まないといけないものだと考えていた。
一方で,仕事においてお客さまに提案をしたり,ベンダーとシステム開発を発注したりと,まわりとうまく調整しながら仕事をしていく機会がだんだん増えてきていた。
昔いた職場で交渉学について触れる機会があり,学んでみたところ,事前準備や交渉本番の進め方はかなり体系立てられており,また体系立てられているがゆえに自分の交渉の進め方を振り返ることができることに驚かされた。
参考になった点
交渉の事前準備のフレームワーク
交渉は出たところ勝負ではなく,準備が重要であり,かつその準備のフレームワークが存在する。準備するべきポイントは以下の3つである。
1. ミッション
交渉を通じて実現したいもののことである。交渉における目先の条件調整にこだわり過ぎるのではなく,より高い視座で目的(ミッション)を定めておくことにより,創造的な解決策が導き出せるようになる。
2. BATNA (Best Alternative to Negotiated Agreement)
交渉が成立しなかったときのバックアッププランのことである。BATNAがないと,どうしても合意をしようとして満足のいかない条件で合意をしてしまう可能性がある。そのような選択肢に流れないためにも,バックアッププランを準備しておくことが重要である。
3. ZOPA (Zone of Possible Agreement)
交渉をする際に,合意の条件を「1点」ではなく「幅」で持たせておくことによって,合意の際の選択肢を広げることが可能になる。
交渉準備の進め方
交渉前には,相手の状況を完全には理解できていないことが多い。そのため,イシューツリーを準備して選択肢を列挙したり,相手の背景情報(コンテクスト)まで考えることで準備を行なうことが重要である。
本書に関する感想とまとめ
本書を通じて,交渉はきちんと準備することが可能であることが理解できた。日々の交渉ごとでも,このフレームワークに則って準備し,終わったら次の交渉に向けて振り返りをすると言った改善を通じて,より良い交渉を目指していきたい。