はじめに
統計検定1級の統計応用(理工学)や準1級において,実験計画法がたまに出てくるが,一般的な数理統計学の本では,実験計画法に関する説明が少ない。
過去記事「中間管理職の統計検定1級 合格体験記 #データサイエンス」にも記載した通り,私は2020年に統計検定1級 統計応用(理工学)に合格した。このとき,青木敏・竹村彰通 著「東京大学工学教程 基礎系数学 確率・統計II」を使って勉強したが,参考になったので紹介したい。
「確率・統計II」の概要
「確率・統計II」は,第1部が実験計画法,第2部が時系列解析である。
第1部の実験計画法は,以下のような章立てになっている。
- 一元配置分散分析
- 二元配置分散分析
- 多元配置分散分析
- 2水準系の完全実施要因計画
- 一部実施要因計画と直行表
- 田口メソッド
「確率・統計II」のいいところ
分散分析を線形モデルの観点で説明している
最初の話題は一元配置分散分析であるが,これを線形回帰モデルの一種として説明している。そのため,分散分析と重回帰分析の共通点・異なる点を意識しながら必要な知識を入れていくことができる。
多元配置法から実験計画へのつながりを説明している
本書では,一元配置→二元配置→多元配置というように,少しずつモデルを複雑にしていきながら,「多元配置法で,すべての因子が2水準である場合」から実験計画法の理論を展開している。
ものごとを覚えるときには,他の話題とのつながりを意識すると覚えやすい。統計検定準1級の学習をしたときは,実験計画法は他の分野と少し離れた独特な分野だと感じたが,分散分析との関連性を重視して説明しているので,記憶に残りやすかった。
(おまけ)タグチメソッド(田口メソッド)との関係を説明している
統計検定とは少し離れるが,製造業における伝統的なデータ解析手法として,品質工学やタグチメソッドが挙げられる。タグチメソッドに出てくる単語は独特なので少しとっつきにくかったが,本書ではタグチメソッドに出てくる用語を数学的に説明しているので,理解がしやすかった。
まとめ
本書は,実験計画法を線形モデルとのかかわりを重視しながら説明してくれるので,統計検定1級の統計応用や,統計検定準1級対策においてとても役に立った。実験計画法を得点源にしていきたい方は,ぜひ本書を手に取ってみていただきたい。